持続可能なメンテナンスへ
新任グループリーダーが見据える新しいカタチ

ものづくりの当たり前を支える設備保全。
機械が止まれば即座に駆けつけ、トラブルの原因を突き止め、再発を防ぎ、時には汗だくになって復旧に奔走する。
設備保全は、安定したものづくりの基盤を担う、工場に欠かせない存在だ。
IJTT海老名工場の保全グループを率いるオマタは、『よいものを届けるために、製造現場を支える』という思いを胸に現場と向き合い続けている。13年にわたる保全の経験を礎に、これからの設備保全のあり方と、そこで働く人たちの成長を見据えている。


まさかの出来事から始まった保全のキャリア

2013年に新卒でIJTT(当時の自動車部品工業)に入社したオマタ。実は、入社直前にアキレス腱を断裂するという不運に見舞われた。入社してすぐは研修だが、座学以外にも工場での実習がある。「松葉杖だったので、通常の現場実習には出られませんでした。そんな私を当時の保全部長が拾ってくださり、キャリアをスタートすることになったんです」

大学ではエンジンに関する研究に取り組んでいたオマタにとって、保全という仕事は未知の世界。 

「正直、最初は『何をする部署なんだろう』と思っていましたね」

しかし、経験を重ねるうちにその仕事の奥深さに魅了されていった。生産ラインで起こっているトラブルを一つひとつ理論的に紐解き、関係部署と協力して復旧させていく。
設備が再び動き出した瞬間に得られる達成感は、この仕事ならではのものだった。
そうして日々を重ね続け、気づけば、今では保全グループを束ねるグループリーダーを務めている。


24時間、工場と向き合う

保全の仕事は決して平坦ではない。24時間稼働する工場において、時には深夜や休日であっても緊急対応が求められる。原因不明の故障に対し、プレッシャーの中で仮説と検証を繰り返すこともある。それでもオマタが笑顔で仕事を語る背景には、彼が「生産部門を支えることが、お客様の期待に応えることへとつながる」という揺るぎない信念を持っているからだ。

「生産が止まらないよう、設備に対しても毎日『今日もよろしく』と声をかけるような敬意を持って仕事をしています」

設備を単なる機械として扱うのではなく、ものづくりをともに支える存在として向き合う。その姿勢が、安定した生産と確かな保全につながっている。


現場の声から生まれた「ロボット道場」

オマタの新たな挑戦が始まったきっかけの一つが工場内の産業用ロボットの増加だった。約10年前には数台しかなかったが、今では40台を超える。しかし、ロボットは故障が少なく、保全のメンバーが日常的に触れる機会は限られていた。

「台数は増えているのに、サポートできる保全のメンバーがいないという問題がありました」

そのような現場の課題意識から生まれたのが、「ロボット道場」だった。

「スタートは、現場のメンバーから『ロボットのスキルを学びたい』という声が上がったことでした。私も、設備故障をゼロにする活動を推進する中で、日常的にロボットと触れ合いながら、スキルを上げることができる場所が必要だと感じていたところでした。自発的に現場からそのような意見が出たことが、とてもうれしかったです」

そこで、工場内の一角を施設にすることを提案。オマタを含めたメンバー3名が通常業務の合間を縫い、床面の工事以外はすべて内製した。4か月かけて作り上げた"道場"には、故障ゼロと人材育成を両立させるという彼らの思いが詰まっている。

さらにオマタは、工場で働くすべての人の"ロボットへの心理的距離"を縮めるために「ロボットカフェ」という新しいアイデアを具現化しようとしている。

「今後主流となるのは、人間と協働するロボットです。単純なワーク搬送だけでなく、コーヒーを淹れるという行為にロボットを使えば、見て楽しく、「ロボットを触れる保全」を育てることにもつながり、もっと身近に感じてもらえるんじゃないかなと。将来的には海老名工場の"売り"になればよいと思っています」


これから見据える、新しい設備保全

オマタが今後3年を目安に実現を目指しているのは、可搬型の協働ロボットと画像処理カメラを組み合わせた「移動検査システム」の構築だ。

協働ロボットは100V電源で動作するため、台車に載せてしまえば「どこへでも持ち運べる検査ロボット」になる。コンセントさえあれば即座に現場へ持ち込み、セットアップが可能だ。品質トラブルが発生した際、全数目視検査や不良選別といった人が担っている工程を、ロボットで自動化する。

「これら一連のシステム構築および立ち上げ・運用を、保全部門内で完結できる体制を目指したいと思っています」

設備を守る、技術を育てる、そして未来の仕組みを創る。現場の鼓動を止めず、技術でそのリズムをさらに力強く。
オマタたちの挑戦は、海老名工場の安定稼働を支えるものだけでなく、IJTT全体の持続可能なものづくりへとつながっていく。